加藤 隆郎
記事の医学監修
久留米大学 医学部 神経精神医学講座 講師 加藤 隆郎 先生
監修範囲:睡眠時無呼吸症候群に関する医学的記述  /  最終監修日:2026.09.18
監修ポリシー

睡眠中の大きないびきや呼吸の停止は、睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)のサインかもしれません。この症状は専門的な治療が必要になる場合が多い一方で、比較的軽度であれば、日々の生活習慣を見直すことで症状の改善が期待できます。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群に対して「自分でできる」対策に焦点を当て、今日から始められる生活習慣の改善方法や具体的なセルフケアを詳しく解説します。

ただし、セルフケアには限界があることも事実です。どのような場合に医療機関を受診すべきか、その目安についても併せて説明します。ご自身の健康を守り、質の高い睡眠を取り戻すための一歩として、ぜひお役立てください。

この記事の要点
  • 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が一時的に止まる、または浅くなる状態が繰り返される疾患です。
  • 睡眠時無呼吸症候群のセルフケアには、体重管理、横向き寝の習慣化、飲酒・喫煙の見直し、口腔筋トレーニングなどがあります。
  • 米国の一般住民を追跡した研究では、体重が10%減ると無呼吸などの回数(AHI)が約26%低下すると推定されています。
  • セルフケアだけで睡眠時無呼吸症候群を「完治」させるのは難しく、重症のケースではCPAP療法などの専門的な治療が不可欠になります。
  • 生活習慣の改善を1ヶ月以上試しても症状が改善しない場合や、日中の眠気で生活に支障が出ている場合は、呼吸器内科や耳鼻咽喉科などの専門の医療機関の受診が推奨されます。

睡眠時無呼吸症候群とは?セルフケアでどこまで改善できるのか

疾患の概要と症状

定義

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が一時的に止まる、または浅くなる状態が繰り返される疾患です※1。これにより体内の酸素濃度が低下し、睡眠の質が著しく悪化します。

代表的な症状には、激しいいびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛、集中力の低下などがあります。

セルフケアで改善が期待できるケースと限界

生活習慣の改善といったセルフケアは、特に軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群において、症状の緩和に有効な場合があります。

肥満が主な原因であるケースでは、減量するだけで無呼吸の回数が大幅に減少することも珍しくありません。米国の一般住民690人を約4年間追跡した研究では、体重が10%減ると、AHI(1時間あたりに呼吸が止まったり浅くなったりする回数)が約26%(およそ4分の1)低下すると推定されています※2。

注意

しかし、セルフケアだけで睡眠時無呼吸症候群を「完治」させるのは難しいのが現実です。骨格的な問題が原因である場合や、重症のケースでは、CPAP(シーパップ)療法(睡眠中に空気を送り込んで、のどの空気の通り道を広げる治療)などの専門的な治療が不可欠になります※1。

自分で対策を試みても症状が改善しない、あるいは日中の眠気が生活に支障をきたすほど強い場合は、自己判断で放置せず、必ず専門の医療機関に相談することが重要です。

自分でできる!睡眠時無呼吸症候群を改善する生活習慣の工夫

ここからは、症状の改善を目指して日常生活に取り入れられる具体的な工夫を5つのポイントに分けて解説します。

まずは体重管理から!肥満と無呼吸の関係

肥満、特に首まわりや喉に脂肪がつくと、上気道(空気の通り道)が狭くなります。睡眠中は喉の筋肉が緩むため、この狭くなった気道がさらに塞がりやすくなり、無呼吸を引き起こす直接的な原因となります※1。

体重を適正範囲にコントロールすることは、最も効果的なセルフケアの一つです。

食事面では、栄養バランスの取れた食事を基本とし、高カロリーな食事や間食を控えることが大切です。

特に、就寝前の食事は胃酸の逆流を招き、喉の炎症につながる可能性もあるため、就寝3時間前までには済ませておくのが理想的です。なお、食事の時刻と無呼吸との関係を直接調べた研究は多くありません。遅い夕食は眠りそのものを妨げるとされているため、夕食は早めを心がけるくらいの気持ちで取り入れてください※3。

運動については、無理なく続けられるものから始めましょう。例えば、1日30分程度のウォーキングや軽いジョギング、水中ウォーキングなどは、体に大きな負担をかけずに脂肪燃焼を促します。継続することが何よりも重要です。

睡眠時無呼吸がある人には有酸素運動や筋トレが有効といわれており、主治医と相談しながら習慣にしていくと安心です※3。

寝姿勢を変えるだけで効果あり?横向き寝のすすめ

仰向けで寝ると、重力の影響で舌の付け根(舌根)や軟口蓋(上あごの奥のやわらかい部分)が喉の奥に落ち込みやすくなります。これが気道を塞ぎ、いびきや無呼吸を悪化させる一因です。

そこで推奨されるのが「横向き寝」です。横向きになるだけで舌の落ち込みを防ぎ、気道を確保しやすくなります。

もっとも、横向きで無呼吸が軽くなるのは、寝る姿勢によって症状が変わるタイプの人です。診療ガイドラインでも、横向きで無呼吸が減ることを確かめたうえで取り入れる補助的な方法と位置づけられています※1。

8件の研究をまとめた分析では、寝る姿勢を工夫する方法は何もしない場合より無呼吸を減らした一方、CPAPほどの効果はみられませんでした※4。

ただ、睡眠中に無意識に仰向けに戻ってしまうことも多いでしょう。その対策として、抱き枕を活用したり、背中にクッションや丸めたタオルを置いたりして、物理的に横向き寝を維持する方法があります※4。

また、枕の高さも気道の確保に影響します。高すぎる枕は首が曲がって気道を圧迫し、低すぎると頭が下がりすぎて舌が落ち込みやすくなります。自分に合った高さや硬さの枕を見つけることも、快適な呼吸をサポートする上で役立ちます。

枕の高さで無呼吸がどこまで変わるかまではわかっていません。首や肩が楽に感じる高さを目安に選んでみてください。

飲酒と喫煙が気道に与える影響

アルコールには、筋肉を弛緩させる(ゆるませる)作用があります。就寝前に飲酒すると、喉の周りの筋肉が通常以上に緩んでしまい、気道が閉塞しやすく(ふさがりやすく)なります※5。飲酒量が多いほど、また就寝直前の飲酒であるほど、その影響ははっきりと現れます※6。

一方、喫煙は喉や気道の粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。炎症によって粘膜が腫れる(むくむ)と、空気の通り道が物理的に狭くなり、無呼吸のリスクを高めます。

米国の研究では、たばこを吸っている人は吸わない人に比べて中等度以上の睡眠呼吸障害(睡眠中の呼吸の乱れ全般)のリスクが高く、禁煙した元喫煙者ではリスクの上昇はみられませんでした※7。とはいえ、喫煙との関連を否定する報告もあり、禁煙で無呼吸が改善するかどうかは、まだはっきりしていません※1。

禁酒・禁煙のすすめ

症状の改善を目指すのであれば、禁酒・禁煙が最も望ましい選択です※1。

難しい場合でも、まずは就寝前の4時間以内の飲酒を避ける、飲酒量を減らす、喫煙本数を減らすといった具体的な目標を立てて取り組むことが重要です。

「4時間」という区切りについては研究自体が少ないため、確かなことは言えません。まずは寝る直前の一杯をやめるところから始めてみてください。

口呼吸から鼻呼吸へ!口腔筋トレーニングの実践

睡眠中に口が開いてしまう「口呼吸」の癖も、いびきや無呼吸を悪化させる要因と考えられます。口呼吸では舌が喉の奥に落ち込みやすく、また、空気が直接喉に当たることで乾燥や炎症を引き起こしやすくなると考えられます。

本来の自然な呼吸である鼻呼吸を促すためには、舌や口周りの筋肉を鍛える口腔筋トレーニングが有効です。

舌や喉の筋肉を鍛える訓練を毎日続けた研究では、無呼吸の回数やいびきが減ったと報告されています※8※9。一方で、こうした研究は参加者が少なく期間も2~4ヶ月と短いため、効果の確かさは中程度から非常に低いと評価されています※10。ここでのポイントは、期待はできるものの、まだ研究が重ねられている段階の方法だという点です。

代表的なトレーニングとして「あいうべ体操」があります。

  1. 「あー」

    口を大きく開けて「あー」と発声する。

  2. 「いー」

    口を横に大きく広げて「いー」と発声する。

  3. 「うー」

    唇を強く前に突き出して「うー」と発声する。

  4. 「べー」

    舌を思い切り前に突き出して「べー」と動かす。

この「あ・い・う・べ」の一連の動きを1セットとし、1日に30セット程度を目安に実践します。声は出さなくても問題ありません。

この体操は、舌や口周りの筋肉を鍛え、舌を正しい位置(上顎についている状態)に保つ力を養うのに役立ちます。

補足

あいうべ体操そのものが無呼吸を減らすかを調べたデータは、今のところ見当たりません。回数にこだわりすぎず、口を閉じて鼻で呼吸する習慣づくりの一つとして続けてみてください。

快適な睡眠環境を整える

質の高い睡眠は、体の回復を促し、症状の緩和にも間接的に貢献します。寝室の環境を見直すこともセルフケアの一環です。

空気が乾燥していると鼻や喉の粘膜が刺激されやすくなるため、加湿器などを使って寝室の湿度を50~60%程度に保つのが望ましいです。室温も、夏は25~26℃、冬は22~23℃を目安に、快適に眠れる温度に調整しましょう。

厚生労働省の睡眠ガイドでも、寝室は暑すぎず寒すぎない温度に保つことがすすめられています※3。なお、ここで挙げた湿度や室温の数値が無呼吸を軽くすると確かめられているわけではありません。自分が心地よく眠れる範囲に調整する目安として使ってください。

また、寝具は清潔に保ち、通気性の良いものを選ぶと快適性が増します。就寝前はスマートフォンなどの強い光を避け、ぬるめのお湯での入浴や軽いストレッチなどでリラックスする時間を作ることも、スムーズな入眠につながります。入浴は就寝の1~2時間前に済ませておくと、寝つきやすくなるとされています※3。

症状が悪化する前に知っておきたい!医療機関受診の目安

セルフケアは有効な手段ですが、万能ではありません。専門医の診断が必要なサインを見逃さないでください。

こんな症状が出たら要注意

以下のような状態が見られる場合は、専門の医療機関(呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠専門クリニックなど)の受診を強く推奨します※1。

  • 今回紹介した生活習慣の改善を1ヶ月以上試しても、いびきや無呼吸の症状が改善しない。
  • 日中の眠気が非常に強く、仕事や学業、車の運転などに支障が出ている。
  • 朝起きた時に頭痛やだるさが続く。
  • 家族やパートナーから、睡眠中に呼吸が10秒以上止まっていると頻繁に指摘される。

日中の眠気が強い場合や、呼吸の停止を指摘された場合は、1ヶ月を待たずに相談してかまいません。

合併症のリスク

これらの症状は、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群である可能性を示唆しており、放置すると高血圧や心疾患、脳卒中(脳の血管が詰まったり破れたりする病気の総称)などの深刻な合併症を引き起こすリスクがあります※1※11。

病気の成り立ちや全体像を確かめたいときは、睡眠時無呼吸症候群の疾患概要を解説した記事が参考になります。

専門医による検査と診断の重要性

医療機関では、まず問診や診察を行い、必要に応じて検査に進みます。自宅でできる簡易検査では、指や鼻にセンサーを付けて睡眠中の呼吸状態や血中酸素濃度を測定します※1。

より精密な診断が必要な場合は、入院して行う終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査が実施されます。

PSG検査とは

この検査では、脳波や心電図、筋電図など多くの情報を記録し、無呼吸の重症度やタイプを正確に診断します※1。

診断結果に基づき、CPAP療法(鼻マスクから空気を送り込み気道を広げる治療)や、歯科で作成するマウスピース(下あごを前方に移動させて気道を広げる装置)など、個々の症状に適した治療法が選択されます。

マウスピースを検討している方は、マウスピース治療の欠点を解説した記事もあわせて読むと参考になります。

治療にかかる費用が気になる方は、睡眠時無呼吸症候群の治療費用と保険適用を解説した記事が参考になります。

睡眠時無呼吸症候群に関するよくある質問

自分で治すのは本当に難しいですか?

軽度の症状で、原因が肥満や生活習慣にある場合は、セルフケアで大幅に改善する可能性があります※2。しかし、「完治」という観点では、専門的な治療をもってしても難しいケースが少なくありません。

セルフケアはあくまで症状をコントロールし、悪化を防ぐための重要な手段と捉え、根本的な解決には専門医の診断と指導が必要だと考えるのが適切です。

市販のいびき対策グッズは効果がありますか?

鼻腔を広げるテープや、口を閉じるテープ、いびき防止用の枕など、様々なグッズが市販されています。これらは、鼻づまりが原因のいびきや、口呼吸の癖を矯正する助けになる場合があり、一時的な症状の緩和には役立つかもしれません。

とはいえ、気道の閉塞が根本的な原因である睡眠時無呼吸症候群そのものを治療する効果は限定的です。あくまで補助的な手段として考え、過度な期待は禁物です。

子どもにも睡眠時無呼吸症候群はありますか?

はい、子どもにも起こります。子どもの場合、主な原因はアデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織のかたまり)や扁桃(へんとう:のどの奥にあるリンパ組織)の肥大であることが多いです※12。

いびき、お口をぽかんと開けて寝る、寝相が悪い、おねしょ、日中の不機嫌や落ち着きのなさなどがサインとなる場合があります。大人とは原因や症状が異なるため、気になる様子があれば小児科や耳鼻咽喉科の専門医に相談することが大切です。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群の改善に向けた第一歩は、「自分でできる」生活習慣の見直しから始まります。

特に、体重管理、横向き寝の習慣化、飲酒・喫煙の見直し、そして口腔筋トレーニングは、症状の緩和が期待できる重要な対策です。まずは一つでも、今日から実践できることから取り組んでみてください。

受診の目安

ただし、これらのセルフケアを続けても症状が改善しない場合や、日中の強い眠気などで生活に支障が出ている場合は、決して自己判断で放置しないでください。

合併症のリスクを避けるためにも、早期に専門の医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが、健康な睡眠と未来の生活を守るために不可欠です。

参考資料・文献一覧
  1. 日本呼吸器学会, 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班 監修. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂; 2020. https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
  2. Peppard PE, Young T, Palta M, Dempsey J, Skatrud J. Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing. JAMA. 2000; 284(23): 3015-21. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11122588/(体重変化と無呼吸の重症度の関係を追跡した研究)
  3. 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
  4. Srijithesh PR, Aghoram R, Goel A, Dhanya J. Positional therapy for obstructive sleep apnoea. Cochrane Database Syst Rev. 2019; 5(5): CD010990. https://doi.org/10.1002/14651858.CD010990.pub2(寝る姿勢を工夫する治療の効果をまとめた総説)
  5. Kolla BP, Foroughi M, Saeidifard F, et al. The impact of alcohol on breathing parameters during sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2018; 42: 59-67. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2018.05.007(飲酒が睡眠中の呼吸に与える影響の分析)
  6. Simou E, Britton J, Leonardi-Bee J. Alcohol and the risk of sleep apnoea: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med. 2018; 42: 38-46. https://doi.org/10.1016/j.sleep.2017.12.005(飲酒量と睡眠時無呼吸のリスクの分析)
  7. Wetter DW, Young TB, Bidwell TR, Badr MS, Palta M. Smoking as a risk factor for sleep-disordered breathing. Arch Intern Med. 1994; 154(19): 2219-24. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7944843/(喫煙と睡眠呼吸障害のリスクの関係)
  8. Camacho M, Certal V, Abdullatif J, et al. Myofunctional Therapy to Treat Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-analysis. Sleep. 2015; 38(5): 669-75. https://doi.org/10.5665/sleep.4652(口腔筋機能療法の効果をまとめた分析)
  9. Guimarães KC, Drager LF, Genta PR, Marcondes BF, Lorenzi-Filho G. Effects of oropharyngeal exercises on patients with moderate obstructive sleep apnea syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 2009; 179(10): 962-6. https://doi.org/10.1164/rccm.200806-981OC(中等症患者への口や喉の運動の試験)
  10. Rueda JR, Mugueta-Aguinaga I, Vilaró J, Rueda-Etxebarria M. Myofunctional therapy (oropharyngeal exercises) for obstructive sleep apnoea. Cochrane Database Syst Rev. 2020; 11(11): CD013449. https://doi.org/10.1002/14651858.CD013449.pub2(口腔筋機能療法の効果と確かさの評価)
  11. Yaggi HK, Concato J, Kernan WN, et al. Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. N Engl J Med. 2005; 353(19): 2034-41. https://doi.org/10.1056/NEJMoa043104(睡眠時無呼吸と脳卒中・死亡の関連)
  12. Marcus CL, Brooks LJ, Draper KA, et al. Diagnosis and management of childhood obstructive sleep apnea syndrome. Pediatrics. 2012; 130(3): 576-84. https://doi.org/10.1542/peds.2012-1671(小児の睡眠時無呼吸の診断と治療の指針)

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