加藤 隆郎
記事の医学監修
久留米大学 医学部 神経精神医学講座 助教 加藤 隆郎 先生
監修範囲:睡眠時無呼吸症候群に関する医学的記述  /  最終監修日:2026.02.18
監修ポリシー

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法として広く知られているCPAP(シーパップ)療法。いびきや日中の眠気といった症状を改善する効果が期待できる一方で、「治療にどれくらいの費用がかかるのだろう?」「保険は使えるの?」といった金銭的な不安を感じている方も少なくないでしょう。(参考:日本呼吸器学会ガイドライン 1)

CPAP療法は継続することが大切な治療だからこそ、費用について正しく理解しておくことが重要です。

この記事では、CPAP治療にかかる費用の全体像から、保険適用の条件、自己負担額の目安、そして「購入」と「レンタル」のどちらがお得なのかまで、あなたの疑問に網羅的にお答えします。

この記事の要点
  • CPAP治療の費用は、保険適用か自費か、購入かレンタルかで大きく異なります。
  • 保険適用を受けるには、医療機関で睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されることが必須です。
  • 保険適用(3割負担)の場合、月々の自己負担額は約5,000円が目安です。
  • 保険が適用されない自費の場合は、月額15,000円程度かかることがあります。
  • 費用や治療法に迷ったときは、自己判断せず専門の医師に相談することが大切です。

CPAP治療にかかる費用の全体像

CPAP治療の費用は、保険が適用されるかどうかで大きく変わります。まずは、保険適用時と自費の場合、それぞれの費用の目安を見ていきましょう。

保険適用の場合の費用目安

CPAP治療が保険適用となった場合、月々の自己負担額は健康保険の負担割合によって異なります。

  • 3割負担の場合:月額 約5,000円
  • 1割負担の場合:月額 約1,500円

この金額には、月に一度の診察料やCPAP機器のレンタル料などが含まれています。多くの方がこの範囲内の負担で治療を継続しています。

保険適用外(自費)の場合の費用目安

医師の診断を受けずに自己判断でCPAP機器を使用する場合などは、保険が適用されず全額自己負担となります。

POINT

その場合の費用目安は、月額15,000円程度です。保険適用の場合と比較すると、3倍以上の負担となることがわかります。

CPAP治療費の内訳

月々の治療費には、主に以下の項目が含まれています。

  • 診察料:医師による診察にかかる費用です。
  • 指導管理料:CPAP治療を適切に行うための指導や管理に対する費用です。
  • CPAP管理料・モニタリング加算:CPAP機器のレンタル料や、機器から送られてくる使用状況データの解析・管理にかかる費用です。
  • 検査費用(初回など):治療開始前に、睡眠時無呼吸症候群の診断を確定させるための検査費用が別途かかります。
  • 機器本体の価格(購入の場合):機器を購入する場合は、初期費用として本体価格が必要になります。

これらの費用が合算され、保険の負担割合に応じた金額を支払うことになります。

購入とレンタルの費用比較

CPAP機器の利用方法は「レンタル」と「購入」の2種類があります。

  • レンタル:月々の定額制で、メンテナンスや消耗品の交換費用が含まれていることがほとんどです。保険診療では、このレンタルが一般的です。
  • 購入:数十万円の初期費用がかかりますが、長期的に見るとレンタルよりも総額が安くなる可能性があります。ただし、メンテナンス費用は自己負担となります。

どちらがお得かは、治療を続ける期間やライフスタイルによって異なります。この点については、後ほど詳しく解説します。

CPAP治療で保険適用を受けるための条件

CPAP治療の費用負担を大きく左右する「保険適用」。では、どのような場合に保険が適用されるのでしょうか。ここが最も重要なポイントです。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断

最重要ポイント

CPAP治療で保険適用を受けるための絶対条件は、「医師によって睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されること」です。自己判断で「いびきがひどいから」という理由だけでは保険は使えません。(参考:日本呼吸器学会ガイドライン 1)

診断のためには、専門の医療機関で検査を受ける必要があります。主な検査には、自宅でできる「簡易検査」と、一泊入院して行う「終夜ポリグラフ検査(PSG)」があります。

これらの検査で、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)を測定し、一定の基準を超えるとSASと診断され、CPAP治療の保険適用対象となります。

保険適用の具体的な流れ

保険適用でCPAP治療を開始するまでの一般的な流れは以下の通りです。

  1. 医療機関での受診

    まずは、いびきや日中の眠気などの症状を、呼吸器内科や睡眠外来などの専門医に相談します。

  2. 検査の実施

    医師の判断に基づき、簡易検査や終夜ポリグラフ検査を受けます。

  3. 診断と処方

    検査結果をもとに、医師がSASの重症度を診断し、CPAP治療が適切と判断されれば、CPAPが処方されます。

  4. CPAP機器のレンタルまたは購入

    医療機関を通じて、CPAP機器のレンタルを開始します。これにより、毎月の治療費が保険適用となります。

保険適用外となるケース

以下のような場合は、保険適用外となり、費用は全額自己負担となるため注意が必要です。

保険適用外となる例
  • 医師の診断や処方箋なしに、インターネット通販などで個人輸入・購入した場合
  • 医療機関での定期的な受診を怠った場合

安全かつ経済的に治療を続けるためにも、必ず医療機関で正規の手順を踏むことが不可欠です。

CPAP機器の購入とレンタルのメリット・デメリット

POINT

保険診療ではレンタルが一般的ですが、購入という選択肢もあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った方法を選びましょう。

CPAP機器をレンタルする場合

メリット
  • 初期費用が抑えられる:高額な機器を購入する必要がなく、月々の支払いで治療を始められます。
  • メンテナンスや故障時の対応がスムーズ:機器の不具合や故障時には、業者が迅速に対応してくれます。マスクなどの消耗品も定期的に交換してもらえます。
  • 常に最新の機器を利用できる可能性がある:治療を続けているうちに、より性能の良い新しいモデルが出た際に、切り替えてもらえる場合があります。
デメリット
  • 長期利用で総額が高くなる可能性がある:治療が数年以上に及ぶ場合、購入した方がトータルの費用は安くなることがあります。
  • 自分の所有物にはならない:あくまで借り物であるため、自由に改造したり売却したりすることはできません。

CPAP機器を購入する場合

メリット
  • 長期利用で経済的になる可能性がある:治療期間が長くなるほど、月々のレンタル料を払い続けるよりも総費用を抑えられる可能性があります。
  • 自分の所有物になる:自分の機器として、旅行や出張などにも気兼ねなく持ち運べます。
  • 医療費控除の対象になる場合がある:医師の証明書があれば、購入費用を医療費控除の対象として確定申告できる場合があります。
デメリット
  • 初期費用が高額:機器の種類にもよりますが、数十万円単位の初期投資が必要です。
  • メンテナンスや故障時の対応を自分で行う必要がある:フィルター交換などの日常的な手入れや、故障した際の修理手配は自分で行わなければなりません。
  • 機器の選択肢が多く、知識が必要:自分に合った機種を多くの選択肢の中から選ぶ必要があり、専門的な知識が求められます。

CPAP治療費に関するその他の情報

CPAP治療の費用負担をさらに軽減できる制度についても知っておきましょう。

医療費控除について

CPAP機器の購入費用は、医師による治療目的の証明があれば、医療費控除の対象となる場合があります。(参考:国税庁 3)

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税が還付・軽減される制度です。

対象となる場合は、確定申告の際に医師の証明書や領収書を添付して申請します。毎月のレンタル料は通常、医療費控除の対象にはなりませんが、詳しくは管轄の税務署にご確認ください。

高額療養費制度について

高額療養費制度は、1ヶ月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。(参考:厚生労働省 2)

CPAP治療単体でこの上限額を超えることは稀ですが、他の病気の治療や手術などで同月内の医療費が高額になった場合には、合算して申請できる可能性があります。

入院費用との比較

CPAP治療の費用を「高い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、睡眠時無呼吸症候群を放置した場合のリスクを考えると、見方が変わるかもしれません。

放置によるリスク

重症のSASは、高血圧、心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる生活習慣病のリスクを高めます。もしこれらの病気を発症して入院・手術となれば、CPAPの治療費とは比較にならないほどの高額な医療費が必要となります。(参考:日本呼吸器学会ガイドライン 1)(参考:Marin ら 2005, 4)

CPAP治療は、将来の健康を守るための「投資」と捉えることもできるでしょう。

CPAP治療でお得に始めるためのアドバイス

費用を抑えつつ、効果的な治療を受けるためにはどうすればよいのでしょうか。

医師が推奨する「保険診療」の理由

POINT

多くの医師がまず推奨するのは、保険診療によるCPAP療法です。その理由は、単に費用負担が軽いからだけではありません。(参考:日本呼吸器学会ガイドライン 1)

  • 専門家による適切な管理とサポート:保険診療では、月に一度の受診が義務付けられています。これにより、医師はCPAPの使用状況や治療効果を定期的にチェックし、患者さんの状態に合わせて空気圧の調整などを行います。専門家による継続的なサポートが、治療効果を最大化する鍵となります。
  • 安全性の確保:自己判断での機器使用は、不適切な設定により効果が得られないばかりか、かえって健康を害するリスクも伴います。医師の管理下で治療を行うことで、安全性が担保されます。

CPAP購入を検討する際の注意点

もし購入を検討する場合でも、まずは保険診療でレンタルから始め、治療が自分に合っているか、継続できそうかを見極めることをお勧めします。

その上で購入を考える際は、以下の点に注意してください。

  • 信頼できる販売店を選ぶ:必ず、医療機関と連携している正規の販売代理店から購入しましょう。安価な海外製品などをインターネットで安易に購入するのは避けるべきです。
  • 機器の性能やメンテナンス体制を確認する:購入後のアフターサポートや保証、消耗品の供給体制などを事前にしっかりと確認することが重要です。

まとめ:CPAP治療の費用負担を理解し、自分に合った方法を選びましょう

この記事では、CPAP治療にかかる費用と保険適用について詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ります。

  • CPAP治療の費用は、保険適用か自費か、購入かレンタルかで大きく異なります。
  • 保険適用を受けるには、医療機関で睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されることが必須です。
  • 保険適用(3割負担)の場合、月々の自己負担額は約5,000円が目安です。
  • 購入とレンタルのどちらがお得かは、治療期間や個人の状況によって判断が分かれます。まずはレンタルから始めるのが一般的です。
  • 医療費控除(購入の場合)や高額療養費制度も、条件によっては活用できます。
  • 費用や治療法について迷った際は、自己判断せず、必ず専門の医師に相談し、ご自身にとって最適な治療法を選択してください。

費用への不安を解消し、前向きな気持ちで治療に取り組むことが、健やかな毎日を取り戻すための第一歩です。

CPAP治療に関するよくある疑問

Q1. CPAPの毎月の費用はいくらですか?

保険適用(3割負担)の場合、診察料などを含めて月額約5,000円が目安です。保険が適用されない自費診療の場合は、月額15,000円程度かかることがあります。

Q2. CPAPを購入したら保険適用になりますか?

CPAP機器の購入費用そのものは、保険適用外となるのが一般的です。保険が適用されるのは、医師の診断と管理のもとで行われる治療(診察料や指導管理料)や、医療機関を通じたレンタル料に対してです。

Q3. シーパップを保険適用で受けられる条件は?

医療機関での検査の結果、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、医師がCPAP治療を必要と判断した場合に保険適用となります。簡易検査や終夜ポリグラフ検査で、無呼吸・低呼吸指数(AHI)が基準値以上であることが条件です。

Q4. シーパップの3割負担はいくらですか?

健康保険が適用された場合の3割負担額は、月に一度の受診と機器のレンタル料を合わせて、約5,000円が目安となります。

Q5. CPAPのレンタル料は高いですか?

保険適用(3割負担)であれば、自己負担額は月額5,000円程度に収まるため、負担は比較的小さいと言えます。しかし、保険適用外の自費レンタルになると月額15,000円程度となり、負担は大きくなります。

参考資料・文献一覧
  1. 日本呼吸器学会『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』 https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
  2. 厚生労働省保険局『高額療養費制度を利用される皆さまへ』 https://www.mhlw.go.jp/content/000333280.pdf
  3. 国税庁『医療費を支払ったとき(医療費控除)』 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm
  4. Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AGN. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet. 2005; 365(9464): 1046-1053. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15781100/

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