加藤 隆郎
記事の医学監修
久留米大学 医学部 神経精神医学講座 講師 加藤 隆郎 先生
監修範囲:睡眠時間に関する医学的記述  /  最終監修日:2026.08.31
監修ポリシー

「毎日5時間しか眠れていないけれど、本当にこのままで大丈夫なのだろうか」「仕事や勉強が忙しく、どうしても睡眠時間が削られてしまう」。

多忙な現代社会で、このような悩みを抱えている方は少なくないはずです。短い睡眠時間で活動する「ショートスリーパー」という言葉に、少しばかりの憧れを抱くこともあるかもしれません。

しかし、多くの人にとって5時間睡眠は、気づかぬうちに心身を蝕む慢性的な睡眠不足の状態です。日中の集中力や判断力を低下させるだけでなく、将来的には深刻な健康問題を引き起こす可能性も潜んでいます。

この記事では、5時間睡眠がもたらす具体的な健康リスクやパフォーマンスへの影響を、科学的な知見に基づいて詳しく解説します。

その上で、どうしても睡眠時間を確保できない場合に、健康への悪影響を最小限に抑え、日中の活動レベルを維持するための具体的な対策と、睡眠の「質」を高める秘訣を包括的に紹介します。ご自身の睡眠を見つめ直し、健やかな毎日を送るための一助となれば幸いです。

この記事の要点
  • 厚生労働省は成人の睡眠時間について、6時間以上を目安に確保することを推奨しています。
  • 5時間睡眠を続けると睡眠負債が蓄積し、本人が気づかないまま認知機能が低下します。
  • 睡眠不足は肥満・高血圧・2型糖尿病・心疾患・うつ病などの発症リスクを高めます。
  • 睡眠時間を確保できないときは、寝室の光と温度を整え、午後の早い時間に短い仮眠をとることが対策になります。
  • 日中の眠気が生活に支障をきたすほど強い場合は、睡眠専門の医療機関に相談してください。

多くの人にとって5時間睡眠が不足している理由

なぜ5時間睡眠では足りないのでしょうか。その背景には、人間の身体に必要な睡眠時間と、睡眠不足が蓄積していく「睡眠負債」という深刻な問題があります。

なぜ5時間睡眠は短いのか?適切な睡眠時間の個人差と目安

睡眠時間には個人差があるものの、多くの研究機関が成人に対して推奨している睡眠時間は7時間から9時間です。

POINT

日本では厚生労働省が「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」ことを推奨しており、おおよそ6〜8時間が適正な睡眠時間と考えられています。米国の主要な睡眠研究者による共同声明でも、成人は7〜9時間を核としながら、それより短め(6時間〜)および長め(〜10時間)も許容範囲とされています※1。

一部には6時間未満の睡眠でも健康を維持できる、いわゆる「ショートスリーパー」と呼ばれる人々も存在しますが、これは遺伝的要因が大きく、極めて稀なケースとされています。

したがって、大半の人にとって5時間睡眠は、心身の回復、記憶の定着、ホルモンバランスの調整といった、睡眠が担う重要な役割を十分に果たすには短い時間です。自分では慣れていると感じていても、身体は着実にダメージを蓄積している可能性があります。

「睡眠負債」とは?短い睡眠が続くと徹夜と同じくらい頭が働かなくなる理由

「睡眠負債」とは、日々のわずかな睡眠不足が借金のように積み重なっていく状態を指します。5時間睡眠の危険性を知るうえで、まず押さえておきたい考え方です。

寝床にいる時間を1日6時間または4時間に制限すると、認知機能や注意力は日を追うごとに下がり続け、14日間続けると、最大で2晩完全に徹夜したのと同じくらいまで落ちたという実験結果があります※2。

しかも、本人はその低下にほとんど気づいていませんでした※2。

必要な睡眠時間を7時間とすると、5時間睡眠を続けることは、毎晩2時間ずつ睡眠負債を抱え込むことになります。この負債が、知らず知らずのうちに脳の働きを鈍らせていきます。

あなたの5時間睡眠は危険信号?睡眠不足のセルフチェックリスト

ご自身の睡眠が足りているか不安な方は、以下の項目に当てはまるものがないか確認してみてください。

  • 日中、特に昼食後に強い眠気を感じる
  • 集中力が続かず、仕事や家事で単純なミスが増えた
  • 以前よりイライラしやすくなった、または気分が落ち込みやすい
  • 休日は平日より2時間以上長く寝てしまう
  • 朝起きるのが非常につらいと感じる
  • 風邪をひきやすくなった

これらのサインは、身体が睡眠不足を訴えている危険信号かもしれません。一つでも当てはまる場合は、現在の睡眠習慣を見直す必要があります。

なお、このリストは診断ではなく、ご自身の生活を振り返るための目安です。

5時間睡眠が招く深刻な健康リスク

睡眠負債の蓄積は、日中の眠気やパフォーマンス低下にとどまらず、長期的には様々な健康リスクを増大させます。

脳と身体への影響:集中力・判断力低下、免疫力低下のメカニズム

睡眠不足は、思考や理性を司る脳の前頭前野の働きを著しく低下させます※1。これにより、複雑な判断や論理的な思考が困難になり、衝動的な行動を取りやすくなるとも指摘されています。

睡眠は、体を守る免疫の働きとも関わっています。睡眠時間が5時間未満や5〜6時間の人は、7時間を超える人に比べて、風邪のウイルスを投与したあとに発症した割合が高かったという実験結果があります(健康な成人164人)※3。日ごろから睡眠時間を確保しておくことが、体調を崩しにくくするための土台になります。

生活習慣病のリスク増大:肥満、高血圧、糖尿病との関連性

5時間睡眠の継続は、生活習慣病の引き金となる可能性があります。特に深刻なのが、肥満、高血圧、糖尿病との関連です※1。

  • 肥満:睡眠不足になると、食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌が増え、食欲を抑制するホルモン「レプチン」の分泌が減少します。睡眠を制限した期間には、レプチンが約18%減り、グレリンが約28%増え、空腹感が約24%強まったという報告があります(健康な若い男性の実験)※4。このホルモンバランスの乱れが、過食や高カロリーな食事を欲する原因となり、肥満のリスクを高めます。
  • 高血圧:通常、睡眠中は心身がリラックスし、血圧は低下します。しかし、睡眠時間が短いと交感神経が優位な状態が長く続き、血管が収縮しがちになるため、高血圧を発症しやすくなります※1。
  • 糖尿病:睡眠不足は、血糖値をコントロールするインスリンの働きを悪くする「インスリン抵抗性」を引き起こすことが知られています。これにより血糖値が下がりづらくなり、2型糖尿病のリスクが上昇します※1。
注意

これらのリスクは相互に関連し合っており、一つが発症すると他の疾患を誘発する悪循環に陥る危険性もはらんでいると指摘されています。

精神的な影響:ストレス、うつ病のリスクと悪化要因

心と睡眠は密接に結びついています。睡眠不足は、感情をコントロールする脳の扁桃体の活動を過剰にし、不安や恐怖を感じやすくさせます。

徹夜した状態では、扁桃体の反応が強まり、感情を抑える働きをもつ内側前頭前野との結びつきが弱まります※5。ささいなことでイライラしたり、感情の起伏が激しくなったりするのには、こうした変化が関わっていると考えられます。

慢性的な睡眠不足は、うつ病の発症リスクを高めるだけでなく、すでにある症状を悪化させる要因にもなります※1。不眠を抱える人は、そうでない人に比べて、その後うつ病を発症する割合が高いこともわかっています(34件の追跡研究のまとめ)※6。

仕事・学業・運動パフォーマンスへの具体的な影響

健康面だけでなく、日中のあらゆる活動の質も、睡眠時間によって大きく左右されます。

認知機能の低下:ミス増加、学習効率の悪化

睡眠不足による前頭前野の機能低下は、仕事や学習の場面で直接的な影響となって現れます。注意力が散漫になり、これまでしなかったようなケアレスミスが増加します※2。

POINT

新しい情報を記憶し、それを整理・定着させるプロセスも睡眠中に行われるため、5時間睡眠では学習効率が下がりやすくなります。良質な睡眠を適切な時間確保することで集中力が増し、学習した内容も定着しやすくなることが報告されています※1。

運動能力の低下:持続力・筋力への悪影響と怪我のリスク

スポーツやトレーニングにおいても、睡眠不足はパフォーマンスの大敵です。筋肉の修復や成長を促す成長ホルモンの分泌が妨げられ、トレーニング効果が得にくくなるともいわれます。

加えて、反応速度や判断力が鈍ることで、思わぬ怪我に繋がるリスクも高まります。睡眠時間が8時間未満の青少年アスリートは、8時間以上の人に比べて怪我をする割合が高かったという報告もあります(112人の調査)※7。トレーニング量を増やす前に、まず眠る時間を削らないところから見直してみてください。

感情コントロールの難しさ、人間関係への影響

前述の通り、睡眠不足は感情のコントロールを難しくします。職場や家庭での些細な出来事に対して過剰に反応してしまうことも少なくありません。

円滑なコミュニケーションのためにも、十分な睡眠をとっておきたいところです。

なぜ6時間睡眠との差が重要なのか?見過ごせない分かれ目

「5時間も6時間も、たった1時間の差ではないか」と感じるかもしれません。しかし、健康リスクの観点から見ると、この1時間には大きな意味があります。

わずか1時間の差が大きな健康リスクに繋がるメカニズム

睡眠時間が6時間を下回ると、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患や、生活習慣病のリスクが高まります※1。

6時間未満のリスク
  • 睡眠時間が1日6時間未満の日本人男性労働者は、7時間以上8時間未満の人と比べて、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患の発症リスクが4.95倍でした(2,282人を14年間追跡)。
  • 世界の研究を集めて92万人分のデータを解析した結果でも、睡眠時間が6時間未満になると死亡リスクが有意に上昇しています。

いずれも厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で紹介されている調査結果です※1。

ただし、6時間を境にリスクが急に切り替わるわけではありません。7時間前後の人がもっともリスクが低く、そこから短くなるほどリスクが積み上がっていく関係です※1。わずか1時間の差でも、健康を守るうえでは見過ごせない違いになりえます。

睡眠の質と量のバランス:6時間以上が推奨される科学的根拠

私たちの睡眠は、レム睡眠(体の動きは止まっているが脳は活発な浅い眠り)とノンレム睡眠が約90分のサイクルで繰り返されています。ノンレム睡眠には浅い段階から深い段階まであり、レム睡眠と組み合わさってこの周期をつくります。

特に重要とされるのが、心身の疲労回復を担う深いノンレム睡眠と、記憶の整理や感情の調整を担うレム睡眠です。

厚生労働省が示す「6時間以上」という目安は、睡眠サイクルの回数から割り出したものではなく、多くの人を追跡した疫学調査の結果にもとづくものです※1。

5時間睡眠では、特に明け方に多く現れるレム睡眠が大幅に削られてしまい、精神的な回復が不十分になりがちだと考えられています。量と質は表裏一体であり、一定の「量」を確保することが、「質」の高い睡眠を得るための大前提となります。

それでも5時間睡眠を選ばざるを得ない時の対策

理想的な睡眠時間を確保することが難しい現実があるのも事実です。そのような状況下では、睡眠の「質」を最大限に高め、日中の活動への影響を最小限に食い止める工夫が重要になります。

睡眠の質を高めるための具体的な習慣

限られた睡眠時間でも、その質を向上させることで、回復効果を高めることが期待できます。

就寝前のルーティン改善:デジタルデトックスとリラックス法

就寝1〜2時間前からは、スマートフォンやパソコンの使用を避けましょう。就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌が始まり、それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されて寝つきが悪くなります※1。

代わりに、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、穏やかな音楽を聴く、軽いストレッチをする、カフェインの入っていないハーブティーを飲むなど、心身がリラックスできる習慣を取り入れるのがおすすめです。入浴は就寝の約1〜2時間前が目安とされています※1。

寝室環境の最適化:温度・湿度・光・音のコントロール

快適な睡眠のためには、寝室の環境づくりが欠かせません。夏は寝室の室温が上がると睡眠時間が短くなり眠りの効率も下がるため、エアコンで涼しく保つことが重要です。冬については、WHOの住環境ガイドラインが室温18℃以上を維持することを推奨しています※1。

湿度も、数字合わせにこだわりすぎず、暑すぎず寒すぎない、過ごしやすい状態に整えてみてください。

光は睡眠の質を大きく左右するため、遮光カーテンを活用して部屋をできるだけ暗くしましょう。豆電球などのわずかな光も、睡眠の深さを妨げる可能性があります※1。

物音が気になる場合は、防音機能のある窓やカーテンに替える、寝床の位置をできるだけ窓から遠ざけるといった工夫が有効です※1。耳栓などを試すのも一つの方法です。

食事と運動の工夫:睡眠をサポートする食生活と適度な運動

食事は、特定の食品にこだわるより、主食・主菜・副菜を中心に様々な食品を取り入れ、バランスの良い食事パターンを心がけましょう※1。

ただし、就寝直前の夜食や間食は体内時計を後退させ、翌朝の睡眠休養感や主観的な睡眠の質を低下させることが報告されています※1。夕食が遅くなるときは、夕方に主食を軽く摂り、帰宅後におかずを軽く摂る「分食」も選択肢になります。

適度な運動習慣は寝つきを良くし、深い睡眠を増やします。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を、就寝の約2〜4時間前までに終えるのが目安です。就寝前1時間以内の激しい運動は、かえって夜の眠りを妨げる可能性があります※1。

短時間睡眠でも日中のパフォーマンスを維持するコツ

日中の強い眠気対策には、午後の早い時間帯の10〜20分程度の短い仮眠(パワーナップ)が役立ちます。夜の睡眠を約5時間に制限した人では、10分の仮眠がもっとも効果的で、20分の仮眠でも効果は125分後まで続きました。一方、30分の仮眠では、目覚めた直後に一時的なぼんやり感(睡眠慣性)が生じています※8。長く眠りすぎないよう、時間を守ることがポイントです。

また、朝起きたらすぐにカーテンを開け、太陽の光を浴びる習慣も重要です。これにより体内時計がリセットされ、夜の自然な眠気に繋がります※1。

週末の寝溜めは本当に有効?その効果と注意点

平日の睡眠不足を週末に補う「寝溜め」は、蓄積した睡眠負債を完全に返済することはできません。しかし、何もしないよりは疲労回復に一定の効果があることも事実です。

一方で、平日と休日の起床時間が2時間以上ずれると、体内時計が乱れてしまい、週明けの「社会的ジェットラグ(時差ボケ)」を引き起こす原因にもなります※1。

寝溜めの効果は条件つき

平日に6時間以上眠れている人に限って、休日の1時間程度の寝溜めが寿命短縮リスクの低下と関連していました(40〜64歳の成人の調査)。一方、平日の睡眠時間が6時間未満の人は、休日に寝溜めをしても寿命短縮リスクがむしろ有意に高いままでした。平日に6時間以上眠っていても、休日に2時間以上の寝溜めをする習慣がある人では、リスクの軽減はみられていません※1。

寝溜めをする場合でも、いつもより長くとも1時間程度にとどめておくのが賢明です。そして、休日に長時間の睡眠が必要になること自体が平日の睡眠不足のサインなので、まずは平日の睡眠習慣を見直してみてください※1。

寝溜めで睡眠負債がどこまで返せるのか、返済に何日かかるのかは、寝溜めの効果と限界を解説した記事で詳しくまとめています。

自分はショートスリーパーなのか?見極めのポイント

5時間睡眠でも日中まったく眠くならず、元気に活動できるという方もいるかもしれません。しかし、それを安易に「ショートスリーパー体質」と判断するのは危険です。

真のショートスリーパーの特徴:遺伝的要因と健康状態

ごく一部の人は、「DEC2」などの特定の遺伝子変異によって、短い睡眠時間でも健康を維持できるとされています。報告されている変異の保因者の睡眠時間は、おおむね6時間前後です※9。

真のショートスリーパーが人口のどのくらいの割合を占めるのかについては、はっきりした推計が示されていません。報告されている遺伝子変異はいずれも極めて稀なものです。

彼らは短い睡眠でも日中に眠気を感じることがなく、心身ともに健康で、活発に活動できるという特徴があります※9。

自己判断の危険性と専門家への相談の重要性

「自分はショートスリーパーだ」と思い込んでいる人の多くは、実際には慢性的な睡眠不足に身体が無理やり適応し、パフォーマンスの低下に自身が気づいていないだけの「無自覚な睡眠不足」状態にあることも少なくありません※2。

本物のショートスリーパーがどのような体質で、訓練で獲得できるものなのかは、ショートスリーパーの医学的定義と遺伝子メカニズムを解説した記事で検証しています。

受診の目安

もし、ご自身の睡眠時間や日中の眠気、体調に少しでも不安がある場合は、自己判断せずに睡眠専門のクリニックや医療機関に相談することをお勧めします。専門家による客観的な評価を受けることが、健康を守るための第一歩です。

5時間睡眠に関するよくある質問(FAQ)

毎日5時間睡眠でも大丈夫な人はいますか?

遺伝的に非常に稀な「ショートスリーパー」と呼ばれる人々は、短い睡眠でも健康を維持できるとされています。報告されている変異の保因者の睡眠時間はおおむね6時間前後で、人口に占める割合についてのはっきりした推計は示されていません※9。

大多数の人にとっては、5時間睡眠は慢性的な睡眠不足となり、健康リスクを伴います。

週末に寝溜めすれば、平日の睡眠不足は解消できますか?

週末の寝溜めによって、疲労感をある程度回復させることはできますが、平日に蓄積した睡眠負債を完全に解消することはできません。

特に、睡眠不足によって低下した認知機能などは、寝溜めをしても完全には元に戻らないという研究報告があります。平日の睡眠時間が6時間未満の場合は、休日に寝溜めをしても寿命短縮リスクが下がらないことも報告されています※1。

5時間睡眠で集中力を維持する方法はありますか?

どうしても5時間睡眠にならざるを得ない場合、日中の集中力を維持するには、睡眠の質を最大限に高めることが重要です。就寝前のリラックス、寝室環境の整備、適切な食事や運動を心がけましょう。

また、午後の早い時間帯に10〜20分程度のパワーナップ(短い仮眠)をとることも効果的です。10分程度の仮眠でも効果が確認されている一方、30分の仮眠では目覚めた直後に一時的なぼんやり感が生じることがあります※8。

疲れが取れないと感じたら、どうすれば良いですか?

まず試すべきは、可能な限り睡眠時間を確保することです。6〜7時間眠れる日を少しずつ増やすところから始めてみてください。

生活習慣を見直しても改善が見られない、あるいは日中の眠気が生活に支障をきたすほど強い場合は、睡眠障害などの可能性も考えられるため、睡眠専門の医療機関を受診することを検討してください※1。

まとめ

5時間睡眠は、多くの人にとって心身の健康を維持し、日中のパフォーマンスを最大限に発揮するためには不十分な時間です。気づかぬうちに蓄積する「睡眠負債」は、集中力の低下から生活習慣病のリスク増大まで、様々な悪影響を及ぼします。

特に、睡眠時間6時間を下回ると心血管疾患や死亡のリスクが高まるという事実は、見過ごすことのできない重要なポイントです※1。

もちろん、多忙な生活の中で理想的な睡眠時間を確保することが難しい場合もあるでしょう。そのような時は、今回ご紹介したように、睡眠の「質」を高める工夫や、日中のパフォーマンスを維持するコツを実践することが、健康への影響を最小限に食い止める鍵となります。

  • 厚生労働省は成人の睡眠時間について6時間以上を目安としており、5時間は多くの人にとって不足しています。
  • 睡眠負債は本人が気づかないまま蓄積し、認知機能の低下となって現れます。
  • 睡眠時間が6時間未満になると、心血管疾患や死亡のリスクが上昇します。
  • 睡眠時間を削らざるを得ないときは、光・温度・運動・仮眠で質を底上げします。
  • 日中の眠気が生活に支障をきたす場合は、睡眠専門の医療機関に相談してください。

ご自身の睡眠習慣を今一度見直し、少しでも長く、そして質の高い睡眠を確保する努力を始めることが、未来の健康につながります。もし睡眠に関する悩みが続くようであれば、一人で抱え込まず、専門家へ相談する勇気を持ってください。

参考資料・文献一覧
  1. 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会『健康づくりのための睡眠ガイド 2023』2024年(令和6年9月18日一部修正) https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
  2. Van Dongen HPA, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF. The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep. 2003; 26(2): 117-126. https://doi.org/10.1093/sleep/26.2.117(睡眠制限を続けたときの認知機能の変化を調べた実験)
  3. Prather AA, Janicki-Deverts D, Hall MH, Cohen S. Behaviorally assessed sleep and susceptibility to the common cold. Sleep. 2015; 38(9): 1353-1359. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26118561/(米国の研究で睡眠時間と風邪の発症を比べた実験)
  4. Spiegel K, Tasali E, Penev P, Van Cauter E. Brief communication: sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004; 141(11): 846-850. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15583226/(睡眠制限と食欲ホルモンの変化を調べた実験)
  5. Yoo SS, Gujar N, Hu P, Jolesz FA, Walker MP. The human emotional brain without sleep – a prefrontal amygdala disconnect. Curr Biol. 2007; 17(20): R877-R878. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17956744/(徹夜後の感情に関わる脳の働きを調べた研究)
  6. Li L, Wu C, Gan Y, Qu X, Lu Z. Insomnia and the risk of depression: a meta-analysis of prospective cohort studies. BMC Psychiatry. 2016; 16: 375. https://doi.org/10.1186/s12888-016-1075-3(不眠とうつ病の発症の関係のメタアナリシス)
  7. Milewski MD, Skaggs DL, Bishop GA, Pace JL, Ibrahim DA, Wren TAL, Barzdukas A. Chronic lack of sleep is associated with increased sports injuries in adolescent athletes. J Pediatr Orthop. 2014; 34(2): 129-133. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25028798/(若いアスリートの睡眠時間と怪我の関係の研究)
  8. Brooks A, Lack L. A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: which nap duration is most recuperative? Sleep. 2006; 29(6): 831-840. https://doi.org/10.1093/sleep/29.6.831(仮眠の長さごとの効果を比べたオーストラリアの実験)
  9. He Y, Jones CR, Fujiki N, Xu Y, Guo B, Holder JL Jr, Rossner MJ, Nishino S, Fu YH. The transcriptional repressor DEC2 regulates sleep length in mammals. Science. 2009; 325(5942): 866-870. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19679812/(睡眠時間を短くするDEC2遺伝子の変異を報告した研究)

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